フル・ハウス/ウエス・モンゴメリーギターのウエス・モンゴメリーをリーダーとする一枚。
1曲目「フル・ハウス」は、「当夜彼らが演奏したコーヒー・ハウスが聴衆で埋まったところから、この題名が選ばれた」(ライナーノーツより引用)とのことである。ウエス・モンゴメリーは、ジョニー・グリフィンのテナーサックスと歩調をあわせながらも激しいギタープレイをしている。実にジャジーなギターだ。長尺のギター・ソロは、ひとつひとつの音が確実に演奏されている。ギターならではの単音と和音の使い方がいい。サイドメンのジョニー・グリフィンのテナー、ウイントン・ケリーのピアノによるソロもウエスに匹敵するかっちりとした演奏だ。ラストもテナーサックスとの共演で締めくくられる。
2曲目「アイヴ・グロウン・アカスタムド・トゥ・ハー・フェイス」。ベースとドラムのバックだけで演奏されるこのバラード曲は、ウエス・モンゴメリーの腕の見せ所だ。切ないバラードを情感たっぷりに歌いあげている。激しさはなく、コードを交え淡々と演奏され、心の琴線に働きかけてくる。ジミー・コブによる、スネアを擦るようなドラムのブラシワークもいい。
3曲目「ブルーン・ブギ」は一転して、ハイテンポの激しい演奏。せかすようなドラムに、ギターソロは超絶なテクニックを駆使して、ガンガン音を繰り出している。ウイントン・ケリーのピアノソロも激しく熱を帯びていて、リズムセクションとのセッションは申し分ない。ジョニー・グリフィンのテナーソロも上手い。このクインテットはテンションが高い。各個人が同じ量のテンションの高さを発揮していて、それが全体のテンションの高さにつながっている。緊張感と興奮を聴く者に感じさせるのは、そのためであろう。
4曲目「キャリバ」はウエスのオリジナル曲で、ラテン調のアップテンポな明るい曲だ。まずは、ポール・チェンバースがベースソロを取っている。地味ながらいい演奏だ。ウイントン・ケリーのピアノソロはとてもスインギーで、思わず体を動かしてしまう。グリフィンのソロはグイングインと音を引っ張り上げている感じだ。それに続き、負けじとウエスのソロが始まる。「ここは俺に任せろ」と言っているような、ノリに乗ったギタープレイを聴かせてくれる。次々とコードを繰り出すウエスの超絶技巧が味わえる。
5曲目「降っても晴れても」は、クインテット全員の演奏レベルの高さを改めて感じさせてくれる一曲だ。全員がまとまっていて、息が合っている。リズム・セクションが安定したリズムを供給していて、その上でウエスのギターとケリーのピアノが楽しげに踊っている。
6曲目「S.O.S.」もウエス・モンゴメリー作の激しいアップテンポな曲だ。ウエスの指使いが激しい。ネックの上でどう左手が動いているかを想像するだけで、その演奏が卓越しているということに感服させられる。ジミー・コブのドラムソロも熱を帯びている。
ディスク全体を通して、スローな曲は2曲目くらいで、あとはアップテンポだ。聴く者に時を感じさせず、一気に駆け抜けてしまう、そんな一枚だ。
1. フル・ハウス
2. アイヴ・グロウン・アカスタムド・トゥ・ハー・フェイス
3. ブルーン・ブギ
4. キャリバ
5. 降っても晴れても(テイク2)
6. S.O.S.(テイク3)
WES MONTGOMERY(g)
WYNTON KELLY(p)
JOHNNY GRIFFIN(ts)
PAUL CHAMBERS(b)
JIMMY COBB(ds)